「見えない暴力に気づく力を育てる――東京都職務関係者研修に登壇して」
昨日、東京都が実施した「職務関係者研修」で講義とセッションを担当しました。
対象は、DV・虐待・困難ケースに日々向き合っている行政職員や地域支援者、民生委員のみなさん。
現場で最前線に立つ“支援の担い手たち”が一堂に会する貴重な研修です。
今回あらためて感じたのは、
暴力とは「見えるとき」より「見えないとき」に深刻化する
ということ。
武蔵大学の中板先生の講義では、まさにこの“見えなさ”が丁寧に言語化されていました。
否認の病が、家庭の中で暴力を覆い隠す
DVや虐待がなぜ外から見えにくいのか。
その理由のひとつに 「否認の病(Denial)」 があります。
加害者は、
「そんなつもりじゃない」「怒らせた相手が悪い」と自分を正当化し、
被害者は、
「私が耐えればいい」「大げさにしたくない」と自分の痛みを小さく扱ってしまう。
家庭の中で“現実の書き換え”が起きる。
これこそが暴力の本質であり、支援が届きにくい最大の理由です。
過去の虐待経験と現在のDVは、同じ根っこを持っている
もうひとつ印象深かったのは
「虐待の連鎖」 の話。
虐待を受けた人が必ず加害者になるわけではありません。
でも、暴力を“関係性のモデル”として学習してしまうと、
自分が大切な人と向き合うときに、同じパターンが繰り返されやすい。
しかし連鎖は、
周囲の誰かが関わることで確実に断ち切ることができる。
これは私も支援現場で痛感してきた真実です。
その人のいちばん近くにいる誰かが、鍵を握っている
暴力の連鎖を止めるのは、
必ずしも専門家だけではありません。
・民生委員
・学校の先生
・地域包括の職員
・同じ自治体内の職員
・職場の同僚
その人の近くにいる“たった一人”が気づくこと。
この小さなきっかけが、暴力からの出口になります。
今回の研修でも、
「違和感を覚えたときにどう動けばいいのか」
「どこまで踏み込んでいいのか」
といった質問が多く寄せられました。
それは、みなさんが本気で地域を守りたいと思っている証拠です。
ウェビナー越しでも、熱量は確かに届く
今回はオンラインのウェビナー形式でしたが、
画面越しにも、参加者の真剣さがしっかり伝わってきました。
チャットには絶えず質問が届き、
「地域での顔の見える連携」
「障害とDVの交差」
「男性被害」
「高齢者夫婦のDV」
など、まさに現場で直面している課題が並びました。
オンラインでも、
“支援の現場をもっとよくしたい”という思いは確かに集まる。
そんな時間でした。
最後に――暴力は孤立の中で強くなる。つながりの中で弱まる。
DVも虐待も、
“悪い家庭で起きる特別な問題”ではありません。
孤立、否認、沈黙。
この3つが重なると、どんな家庭でも暴力は起きうるし、長期化します。
そしてそれをほどくのは、
つながり・対話・気づき・寄り添い。
制度や法律だけでは届かない場所を、
“人”が補っていく。
今回の東京都の研修は、
その大切さを再確認する機会でした。
支援に携わるすべての方に、心からの敬意を込めて。
そして、今日学んだことが、
どこかの誰かの「出口」につながることを願っています。
