相手が「嫌がること」を好んでするDV
DVという言葉から、殴る・怒鳴る・脅すといった分かりやすい暴力を思い浮かべる人は多いと思います。
けれど、相談の現場で多く語られるのは、もっと静かで、しかし確実に人を追い詰めていくDVです。
その一つが、
相手が嫌がると分かっていることを、あえて繰り返すDVです。
このタイプのDVで重要なのは、
加害者が、相手が嫌がっていることを理解しているという点です。
何度も「やめて」と伝えている
表情や態度で不快感を示している
その話題になると黙り込む、体調を崩す
距離を取ろうとする
それでも同じことを繰り返す。
これは無神経でも冗談でもありません。
意図的な行為です。
このDVでは、
行為そのものより相手の反応が目的になります。
困る
嫌がる
混乱する
我慢する
必死に説明する
その反応を見て、加害者は無意識にこう確認しています。
「自分はこの人を動かせる」
「この人の感情は、自分の影響下にある」
つまり、
相手をコントロールできているという感覚が報酬になっているのです。
このDVの被害者は、決して何もしないわけではありません。
分かってもらおうと説明する
関係を壊さないよう言葉を選ぶ
冷静に話そうと努力する
自分の感じ方を丁寧に伝えようとする
とても誠実で、必死です。
多くの人がこう思っています。
「ちゃんと説明すれば、分かってくれるはず」
「伝え方を変えれば、変わってくれるかもしれない」
これはとても残酷な事実ですが、
このタイプのDVでは、
被害者が一生懸命になればなるほど、状況が悪化することがあります。
なぜなら加害者にとって、
長い説明
感情のこもった訴え
涙や混乱
論理的な説得
そのすべてが、
「ここまで相手を揺さぶれている」
「まだ自分の支配は効いている」
という確認材料になるからです。
結果として、
同じことを何度も繰り返す
揚げ足取りや論点ずらしが増える
「大げさだ」「気にしすぎだ」と軽く扱う
さらに嫌がる行為をエスカレートさせる
という悪循環が起きます。
ここで被害者は、もう一段自分を責めます。
もっと上手く話せばよかった
感情的にならなければよかった
説明が足りなかったのかもしれない
でも、問題はそこではありません。
すでに対等な話し合いが成立しない関係になっている
ただ、それだけのことです。
説明や説得で変わる段階は、
もう過ぎているのです。
このDVは、一つ一つの行為が小さく見えます。
ちょっとした言葉
からかい
無視
嫌な話題の蒸し返し
わざと不機嫌になる態度
だから被害者は、
「私が気にしすぎなのかも」
「これくらい我慢すべき?」
「DVと言うのは大げさ?」
と、自分の感覚を疑い始めます。
でも、
嫌だと伝えているのに繰り返される行為は、
それだけで暴力です。
相手が嫌がることを好んでするDVは、
激しくはありません。
けれど、人の尊厳・判断力・自己信頼を静かに削っていく暴力です。
そして、
あなたが必死に説明しても、説得しても変わらなかったのは、
あなたの言葉が足りなかったからではありません。
その関係が、説明で変わる段階を超えていただけです。
もし、この文章を読んで
「これ、うちのことかもしれない」と感じたら、
一人で答えを出そうとせず、相談してみてください。
