DV加害者プログラムの紹介:「僕の生活スタイルを理解してくれ」──特権的な価値観と向き合うケーススタディ
先日のDV加害者プログラムでは、「A男さん」のケーススタディをもとに、特権的な生活スタイルがDVにつながるプロセスについて考えました。
ケース概要:「自分中心」の当たり前を問う
ケースの内容については省略させていただきます。
振り返りの視点:特権的なスタイルがもたらす支配
このケースから、以下のようなDV的要素が浮かび上がりました。
・自分が家計を支えているという理由で、相手の時間や感情を軽視(=経済的支配/責任の転嫁)
・自分の成功や頑張りを理由に、相手の訴えを否定(=否認と正当化)
・家庭の役割分担を固定し、家事・育児を「任せているだけ」と捉える(=ジェンダー規範に基づく役割の押し付け)
これは、「経済的虐待」や「精神的・感情的虐待」、「責任の転嫁」「否認」といった領域に該当します。
背景にあるDV加害者の信念と被害女性の気持ち
DVの行動の背景には、「仕事ができることが男の価値」「家事は女性の役割」「感謝していればいい」というジェンダーに基づく無自覚な特権意識があります。
一方でパートナーである被害女性は、おそらく次のような感情を抱いていると考えられます。
・不安:子どもの安全が脅かされたことへの恐れ
・疎外感:自分の苦労や声が無視されることへの寂しさ
・怒りと絶望:「理解してほしい」と訴えても受け止めてもらえないつらさ
新しい生活スタイルへの一歩
DV加害者が変えるべき点は、「自分が中心にいる」という構造を見直し、家庭内のパワーバランスを対等にすることです。
具体的にはどうしたらよいか、みなさんもぜひ考えてみてください。プログラム内ではいろいろな意見が出ました。
DVのない対等なパートナー関係を築くには、暴力をやめることだけではなく、自分が「当たり前」と信じていた生活スタイルや思考を問い直すことから始まります。今回のプログラムでも、多くの参加者が「自分の中にも同じ思い込みがあった」と気づきを語っていました。
私たちはこれからも、加害者自身が“変わる力”を育めるようサポートしていきます。